黒龍神。
「嗚呼、ラビ。こんなところにいたのか」
…それはこっちの台詞だよ。
「ん? 何故そんなに不機嫌なのか」
急にいなくなって。
あなたは私の前から姿を消して、それで。
「……」
私。
「……泣かないで。否、此処はたくさん泣いて良いと言うべきか。おいで、ほら。…辛かったね」
ごめんなさい、黒龍神。
「如何して謝るんだ? 君は何も悪いことをしてないじゃないか」
ごめんなさい、黒龍神。
私だけ助かって、ごめんなさい。
目を開くと、寒々しい星空が見えた。
まるで濃紺の布に、ダイヤモンドをぶちまけたみたいだった。
黒龍神の笑顔が、頭に焼きついている。
触れた温もりも、向けられた言葉も、みんなみんな余りにリアル過ぎて。
だから思ってしまうのだ。
本当は此処にいる私が嘘で、明日目が覚めたら何もかも元通りになっているんじゃないかと。
唯の悪い夢だったんじゃないかと。
「馬鹿だね、私」
自嘲気味に笑って、椅子の上で膝を引き寄せた。
まさか今頃になって、彼の夢を見るなんて。
膝を抱えたまま、歯を食い縛った。
そうまでして私は、黒龍神に謝りたかったんだろうか。
寂しいなんて、私は思ってはいけない。
それは罪だ。
だって、きっとたった独りで死んでいった黒龍神の方が寂しい。
彼は寂しかろう。
今も冷たい土の下で、独りぼっちで私を待っている。
そんな気がしてならないのだ。
私は、この世界が恐ろしい
(黒龍神がいなくなっても、平気で回っているこの世界が)