あの日

白薔薇を愛でた少女は

その可憐さを失うことを恐れ

刻む秒針を呪い、刻を裏切らんが為に

贖うこと無き罪に身を投じた

 

 

或いはあの日

祖国に裏切られた少年は

復讐の焔に焼かれ、誰が為に彼の者を裁くか

血を映すその瞳に

されど愛は灯らず

 

 

白兎は笑う

この狂宴の終わりに待つ審判を見据え

歪(ひず)む狭間の世界を天秤へと堕として

ジョーカーは誰が持っている、と

 

 

存在しない歴史書は開かれ

懐かしき鍵盤(しらべ)が鳴り響く時

懐中時計は残酷な刻を刻み始める

 

 

今宵、役者は揃った

開幕の鐘(ベル)を聴き逃すな

 

 

全ては此処から始まる

 

 

      『名も無き書 戯言の章』より